日本の会社には、正社員の採用を原則として新卒一括採用のみ行う不思議な慣習が存在する。
選別した新卒者を4月に入れると、それ以外の間は、門戸を閉ざし、中に入れようとしない。
むろん、最近は即戦力人材の獲得のため転職者市場もそれなりに成熟しているが、その転職者として想定されているのは、前職をたどっていくと、かつてどこかの企業に新卒一括採用された人がほとんどであり、学校卒業時どこにも就職する当てがなく、新卒採用されずにそのまま既卒扱いになってしまった就職氷河期に学生だった人たちとかは、転職者市場においても正社員として採用されることにおいて苦戦を強いられているのが現状であるといえる。
新卒一括採用がなぜ好まれるか?
まず、非所属者、よそ者、浮浪者嫌いの考え方が、根底にある。(欧米やモンゴルのような遊牧・牧畜民では、むしろ非所属者、よそ者、浮浪者の状態が普通、一般的であり、それほど嫌われないと考えられる。)
新卒一括採用は、採用する人員が、所属集団の外部に出ずに、一方の所属集団から他方へと、いわば「ウチ」から「ウチ」へと移行するから、好まれると言える。
人員は、卒業と同時に、入社しないといけない。
学校を出ると同時に、会社に入らないといけない。タイムラグがあってはならない。そのタイミングで入り損ねて既卒扱いになるともう入れない。
学校、会社が、それぞれ閉じた「ウチ」の袋、球状の閉鎖的、排他的スペースを形成しており、一方の「ウチ」と他方の「ウチ」をつなぐ時限ブリッジ、パイプ、通路が一時的に形成されるようになっている。
通路は、通れる新規学卒者を事前に選抜して内定しており、選抜された者のみが学校側から会社側へと一時的に通れるようになっている。通れるタイミングを逃し、通り損ねると、会社側へは正社員としては一生入れない。
一方の集団(学校)から他方の集団に移れる人員(内定を勝ち取った新卒者)およびタイミング(3月31日23時59分~4月1日0時0分の一瞬のみ)を限定し、その間のみ二つの集団間に時限ブリッジを設けて、人員を自動的に渡らせる。
日本では、信頼される人員は、いつでも、どこかの集団(「社」、「閥」、ネットワーク)に必ず属していないといけない。常時、どこかの「ウチの人」でないといけない。
日本人は、どの集団にも属さず、所属集団の外に1人出たままになるのを好まない。そうした状態になった人、どの集団にも入れてもらえない人を信用しない。こうした「よそ者」には、フリーター、非正社員(契約社員、派遣社員)、転職したばかりの人が含まれる。彼らは「よそ者」として括ることができ、彼らが正社員に比べて格下扱いされるもととなっている。
ある集団(ウチ、ムラ)から他の集団(ウチ、ムラ)へと移るとき、普段は入り口を閉ざしたそれぞれの集団が、同時に合意して同期して、一時的に出口入り口を同時に開け、集団間を渡るブリッジを設けた時のみ移ることが出来る。
この時限ブリッジ上を指定期日にうまく渡るのに成功しないと、落ちてしまい、そのうちブリッジが消えてしまい、集団の外に一人出てしまう。そうすると、一方の集団を既卒扱いになってしまい、二度と他方の集団に入れてもらえなくなる。
学校は、期日が来ると、トコロテン式に成員を外に排出する。排出されて、次の集団に入れなかった人は、既卒者、フリーター、非正社員として扱われ、他の集団にも正式に中に入れてもらえる機会を、半永久的に失ってしまう。
日本の会社における中途採用と正社員の関連は、以下のようになっている。
日本の会社での正社員の中途採用は、
・他のれっきとした会社で正社員だった人
に限られる。
正社員になれるのは、
・新規学卒
に限定される。
学校を卒業した時点で、即どこかの会社の正社員になっていないと、一生正社員になれない、なりにくい構図になっている。学校を出ても、無職でどこの会社の正社員でもない期間ができると正社員になれない。
正社員と、非正社員(派遣、パート)との間に大きな待遇格差がある。
学校を卒業して、正社員になれるかなれないかで、その後の人生で大きな格差が生じる。生じた格差は、いったん非正社員になってしまうと正社員への道(中途採用を含む)が閉ざされるため、再チャレンジできず、埋められない。