-同所(同期)加入者相互うち解け」現象の活用-
東京のような大都会では、人の出入りや移動の動きが激しく、隣がどういう人だか分からないアパートやマンションにいきなり引っ越したりするのがざらである。そのため、自分の身の安全に敏感で、身元の知れた信用できる人としか付き合おうとしない傾向のある日本人は、そうした何者か分からない自分の周囲の人とはできるだけ関わりをもとうとせず、各自が一人孤立して住居に住むことになる。その様子が、一人一人バラバラな個人単位で動こうとする気体タイプと似ている。
男性の場合、隣の人が誰だか分からないところに住んでいる場合でも、自分の勤め先の会社に出社すると、「ウチの会社」で気の置けない同僚と、家族のような親密さや一体感で協調して仕事をすることができ、その点、従来の液体的な所属欲求を、会社で満たすことができる。
女性も、正社員の会社員である場合はいいのであるが、結婚して夫の転勤に付いてきて大都会住まいをしてそこで子供が生まれて育児をすることになった場合、周囲に誰も助けてくれる人を見つけられないまま、母子だけで、孤独な密室で育児をしなければいけないことになる。その際の女性の孤独感や窒息感、ヘルプレスの感覚は相当なものであり、ストレスがたまって、我が子の虐待とかに走ることになる。
こうした密室育児が起きる原因は、女性たちが、自分の身の安全に敏感で、身元の知れた信用できる人としか付き合おうとしない、まさにその点にあるのだと言える。つまり、対人面での安全、安心を確保できる相手としか関係を持とうとしない「対人安心、安全指向」が、周囲の見知らぬ、安全かどうか分からない人に助け、つながりを求めることができず、一人孤独に育児を抱え込むことにつながるのである。
この密室育児は、子供が成長して、保育園とか幼稚園に入ることで解消されることが多い。なぜならば、同じ保育園や幼稚園に入った他の母親や入園先の保育士たちと、同じ所に一緒に入ったということでつながりが出来、互いに同じ境遇を共有する者同士で、自然と相互信頼、安心感が生まれ、相談し合ったり、助け合ったりすることができるようになるからである。
ここに、密室育児の解決方法が存在する。日本人には、同じ所に一緒に入所した者同士が、互いに同じ境遇で信頼し合い、うち解けて仲良くなりやすい傾向があるというのを活用すればよいということになる。この傾向は、「同所(同期)加入者相互うち解け」現象とでも呼べる。この現象を活用する。
具体的には、母親が子供を出産した段階で、母親のその地域の「育児ネットワーク」への加入を、自治体なりで制度化して促進し、同じ境遇の母親同士、あるいは相談員、コーディネータとの間で、自由に情報交換したり、悩みを聞いてもらったりするようにすればいいのではないだろうか。小学校とかと同じく、同じ公共機関の会に一緒に加入することで、育児の境遇を互いに共有でき、母親同士が相互にうち解けて、育児上の情報交換をして心理的に助け合うようになることで、孤独感、密室感を解消することができると考えられる。「育児ネットワーク」は保育園、幼稚園みたいに公的裏付けを持った機関とすれば、母親たちも安心して加入することができると考えられる。
「育児ネットワーク」は、別に物理的交渉を頻繁にしなくても、mixiのような地域限定の内密なソーシャルネットワークのサークルみたいな感じで、ネット上で意見交換する場を設けると共に、いざという時の助けを呼べるために、必要に応じて「自分は○○地区に住んでいます」みたいな居住地の情報を開示すればよいのではないか。